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2011年11月14日

『鬼面の研究』マンガ版 まんだ林檎・栗本薫

名探偵伊集院大介鬼面の研究 上 (1) (CR COMICS)
名探偵伊集院大介鬼面の研究 上 (1) (CR COMICS)

 前作『優しい密室』のマンガマンガした表紙からうって変わって、紙質からデザインまで違う落ち着いた表紙に。『トリック』風?なかなか力入ってます。並べてもシリーズ物だと分からないという危険もありますが。

「マンガ化するにあたって、何故よりにもよって『鬼面』?」というのは伊集院ものを読んでいた人なら誰でももつ疑問だと思いますが、まんだ林檎氏のあとがきで了解しました。まず『優しい密室』からのつながりで、森カオルがワトソン役をつとめる作品をもう一つ出しておきたいというのは分かります。この後、森カオルフェードアウトしちゃいますからね。

 あと『絃の聖域』や『天狼星』を先にやってしまうと、その後に『鬼面』を出すのはインパクトの点できついという気もします。このタイミングしかないんじゃないかな。


 で、『絃の聖域』におけるやおい趣味、『優しい密室』の女子高生一人称、乱歩風の『天狼星』と比して、横溝風の線でいったものの中身としてはかなり地味な『鬼面の研究』、個々の推理面ではちょっと強引なところもありつつ、首なし死体ではトリック面で技をかけてきますし、横溝風の舞台というのが実はミスディレクションになっているなど、地味に批評性がある作品になっています。それにしても小嶋ちゃん、絡むひまもなく殺されてかわいそう(泣)

 ちょっとこの作品では大介がピリピリしすぎていて、今ひとつ彼の茫洋とした魅力が出ていない嫌いがあるのが残念なところ。長編で連続殺人となるとボケをかます余裕がなくなるので仕方ないんですけどね。その分、巻末には大介のキャラを押し出した短編「伊集院大介の私生活」が入ってるので、ここで大介成分を補給しろと。
 大介のキャラクターを活かすためには短編集『伊集院大介の冒険』と『伊集院大介の私生活』からセレクションしてマンガオリジナルの短編集を一冊出す方が良いのではと思います。

 森カオルは前作に比べてかなり落ち着いていて、もう主人公っぽくはありませんが、わたし的にはむしろいい感じ。

 嵐の山荘、見立て殺人、首無し死体、さらにマンガ版ではカットされていますが「読者への挑戦」と、意識的に本格ものの要素を取り込んでおり、ある意味では栗本薫っぽさが低いとも言えますが、孤立した寒村における鬼に関わる伝承という伝奇的な衣装をまとわせつつ、真相ではベタベタな人間関係の中の利害に動機を求めるというのは、少なくとも初期の栗本薫のミステリの常道。

 派手さはないけど、手堅く作られたこの作品、まんだ林檎氏のブログを読むと部数がだいぶ抑えられてるようです、うーん。


 原作の方はたしか綾辻行人が高く評価していて、どこだったかなぁ、島田荘司との対談かなにか? いっそのこと奮発してマンガ版には綾辻行人に帯とか書いてもらってもよかったんじゃないかな。ちゃんと売れたら今度こそ『絃』というのは、もうダメ……?。


 しかし、この文章読むと、なんだかわたし、栗本薫が好きな人みたいに見えてしまいそうですね!

名探偵伊集院大介鬼面の研究 (下) (CR COMICS)
名探偵伊集院大介鬼面の研究 (下) (CR COMICS)

鬼面の研究 (講談社文庫)
鬼面の研究 (講談社文庫)

タグ:栗本薫
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posted by すける at 18:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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