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2013年03月30日

『黒い仏』殊能将之

*09年7月に別のところに書いた日記を修正した転載です。

 殊能氏に関しては日記は毎日読んでいるのに、本業の小説の方はほったらかしという不義理を積んでいるので、たまには読まないとなぁと。

黒い仏 (講談社文庫)
黒い仏 (講談社文庫)

 で、印象としては参考文献にもあがってるロバート・ブロック『アーカム計画』が似てるかね。あと下敷きになってるのはキャラクターの名前からしてラヴクラフトの「ダニッチの怪」か。これくらいなら、SF者のわたしも読んでいる。

『アーカム計画』なんかは、作品内では一人称の語り手のあくまで個別的な破滅を書くことが多かったラヴクラフト作品を、大きな破滅の物語の中に回収しようというダーレスの手際に職人的な巧さがあり楽しめた。
「ダニッチの怪」は、ラヴクラフトの中では、邪神退治がいちおうの成功を見せる短編ということで、デッドエンド好き以外にも受け入れやすいかも。これの映画化、テレ東のたしか昼の映画枠で見たことあるよ。

 最後の大バカアリバイトリック(というのか?)は、進化論の根拠である化石の存在に関する、創造説側からの「反論」っぽい感じです。それは神が創ったのだ!
 タイムトラベルのときの具体的なやり取りのシーンは、はっきりとした元ネタはあるんだろうか。どの作品がどうというよりは、典型化したようなイメージなのかな。

 居酒屋の回文は、メニューを見る前に店の名前を見た段階でわかった。言葉遊びは得意ではないけれど、これくらいならピンと来る。


 どうも、この作品一部でものすごく嫌われたという風説があるんだけれど、神話系の話としてみれば、普通だとしか言いようがない。終盤の石動のずっこけ推理や、刑事の今田の勘違い説教など、定型に対する悪意があってこの辺が嫌われたか。
 とはいえ、この作品に対して二階堂黎人先生がなにかおっしゃっているか気になったので、検索をかけてみると、直接の発言には当たれませんでしたが、狂乱葛西日記の1/22付け日記では『黒い仏』を評価する一派は「見識がない」とのこと。そりゃそういうだろうなぁと、先生の一貫した態度を見るにつけ、身の引きしまる思いです。わりとマジで。


 あ、興味のある方は著者自身による特設ページも見たほうがいいかもしれません。

 ラヴクラフトの文章の仏典風翻訳とか、関心のない人から見ればまったく無駄としか思えないようなところへの力の入れっぷりが泣けます。安蘭寺ってのは元ネタわからなかったけど、こういうの好きだね、ミステリの人は。

アーカム計画 (創元推理文庫)
アーカム計画 (創元推理文庫)

ラヴクラフト全集〈5〉 (創元推理文庫)
ラヴクラフト全集〈5〉 (創元推理文庫)


タグ:殊能将之
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posted by すける at 19:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | SF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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