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2013年12月18日

ゲームブックファン感謝祭

 ゲームブック屈指の名作とされる鈴木直人〈ドルアーガの塔三部作〉最終巻『魔界の滅亡』の刊行を記念して、12月14日に秋葉原書泉ブックタワーイベントフロアにおいて、ゲームブックファン感謝祭が行われました。さいわい、わたしもこのイベントに参加することができたので、今回はレポートを書こうと思います。

魔界の滅亡 (ゲームブック・ドルアーガの塔)
魔界の滅亡 (ゲームブック・ドルアーガの塔)

 メインはブーム当時から活躍され、またジャンル自体の最高傑作クラスの作品を書いてきた思緒雄二さん、フーゴ・ハルさん、森山安雄さん、中河竜都さんらのゲームブック作家の方々のトークショー。中河さんは「バルキリー・ナヲミ」という名前の方が馴染み深い人も多いかもしれません。肝心の鈴木直人さんが都合がつかず参加できなかったことがつくづく残念ですが、目を描かれた龍は飛んで行ってしまうので、仕方ないかなあと諦めるしかありません。
 じっさい、ここに並んでいる方だけでゲームブック作家最強のカードと言っても決して過大な表現ではない、かつて無くまた二度とは無いのではないかという豪華な顔ぶれ。ブーム当時の中学生であるわたしに「これらの人々が一堂に会するイベントがあり、お前も立ち会うだろう」と教えても絶対信じません。ひねくれたガキだったし「出版社の系列も違うし無理じゃね」とか唇を曲げて不信感を示すんじゃないでしょうか、しかし実現したんだよ!

 司会は21世紀におけるゲームブック界のキーマン、創土社の酒井さん。ここから敬称略で書きます。録音を取っておらずメモだけなので、あまり言葉を勝手におぎない過ぎないように単語レベルになったり、体言で止めたりしますがご容赦を。

 まず、「ゲームブックとはどういうものか」という核心的な質問からスタート。

森山「『火吹き山』を読んで、小説の新しい表現技法として受け止めた」「が、何かが足りない」「ストーリーと結末、伏線」を付加できると思った。この辺りの見解はWebミステリーズ掲載の岡和田晃氏によるインタビューでも確認できます。
「(ゲームブック観について)一色に染まるのはイヤなので、色々なゲームブック観があってよい」
中河「ゲームの一形態」(所属会社の観点からも)
思緒「表現手段の一つ」 「システムによる制約は面白くもあり、苦労するところでもある」
(『送り雛は瑠璃色の』創土社版あとがき「ゲームブックの構造的不自由が(その不自由ゆえ必然として)生み出す物語」という文章を参照のこと)
「紙だからこそ挑戦できることもある」(ページをめくる行為等)
フーゴ「本という形態を活かした選択肢」「既存のシステムは捨てる」「ストーリーからシステムを生み出す」

 デビュー作について。
思緒『ウォーロック』掲載の、世界観についての記事。
フーゴ「一冊にまとまったものとしては『グーニーズ』」「絵コンテの権利獲得から始めた」(このくだりはフーゴさんのHPプロフィール参照。)
森山「SFM掲載の短編→矢野徹さんの紹介→『POPCOM』に短編ゲームブック「新世界から」掲載」「最後に世界全体の謎が明かされる」「ルール説明は物語の展開に沿って行なわれる」 この辺の構成は森山さんのSF的な感性を強く感じられる。
中河「『ゼビウス』持ち込み」「三社に持ち込み。最終的に創元に」(持ち込み過程でフーゴ・ハルさんとも接触していたらしい。意外な接点)

 楽しかったこと
思緒「送り雛、三週間で書いた」「感情移入して書いた」「『顔のない村』は三日で書いた。一週間以内で書いてと言われて」「「夢草枕・歌枕」は30日。締め切りが特に無かったので」(単行本用書き下ろし)「(書く速度について)デジタル入力は変換で遅くなる。候補を見るときに(文章から)離れてしまう。手書きはトランス状態」
フーゴ「創るのが楽しい>遊ぶのが楽しい」(作り手のプロに対して、プレイヤーのプロ、読者のプロがいる)ちょっと具体的な言葉の記憶が曖昧ですいません。「安田均さんには、わたしは両方好きですと言われた。かないません」
森山「同じものは作らない。これは絶対オレしか書いてないぞと」「『ウォーロック』の順位表見るの楽しい」(注『展覧会の絵』は上位の常連でした)

 今だから言えること。ここは少し飛ばしながら。
森山「待祭の旅」を演劇部で使いたいという話があった。どうなったかは分からないが。
思緒「『送り雛』は高校の演劇部で上演された」
森山「(創土社のゲームブック復刊について)この会社つぶれるぞと思ったが十何年続いてる」

 新作について。ここも不確定情報が多いので、詳細は省きますが、フーゴさん、思緒さんは紙媒体やアプリの方のメディアでも進行中の企画がある様子。森山さんはゲームブックの予定はないが、小説が、登場人物などゲームブックの世界とリンクしていることがあるとのこと。ナヲミさんはベリーダンサーにクラスチェンジ。

 自分以外ですごいと思った作品。
思緒『ソーサリー!』(スティーブ・ジャクソン)
「ブレナンの作品は絵を描かせるなど読者のクリエイティブな行為を引き出すのが面白い」
フーゴ「『火吹き山の魔法使い』、個別に優れた部分のある作品はたくさんあるがこのインパクトは超えない」(ジャンル自体の創造という点か)
森山「『シャーロック・ホームズ10の怪事件』『魔界の地下迷宮』」(別のところで『魔城の迷宮』も絶賛されてました)
中河(ここはなぜか聞き逃してしまってる。鈴木さんだったはず)

 トークのメモはここまで。酒井さんの苦労話では「作家さんに連絡をつけるのが大変だった」という。そうだろうなー。あと、違う話になるけれど復刊に当たって「ドルアーガの塔」という名前を守ってくれたのは本当に大きいね。

 すべて聞きごたえのあるトークだったけれど、圧巻はやはり最初の「ゲームブックとはどういうものか」に関わる言葉でした。基本的に、すでに何らかの形で発表されている文章やインタビューで述べられていたことをあらためて語り直していて、居並ぶ作家本人の口から次々と目の前で語られるのを見ると圧倒されます。ここにいるのがジャンルの方法についてするどく自覚的な顔ぶれであることは、メモから書き起こした文章だけでも明確です。
 これらの人たちは基本的にストーリーとシステムを相互に作用する不可分で一体のものと考えており、すでに完成されたシステムを流用し、そこにありあわせの物語を乗せることについては創作意欲を感じておらず、つねに新しい表現を狙っていることがうかがえます。
 それだけに『ウォーロック』に寄稿したコラムが提起した問題を考えても、鈴木直人さんの口からも、このテーマについて聞きたかったとあらためて思ったり。このあたりのことについては、思緒さん、フーゴさんの作品と並べて、のちに論じる機会があればと思います。

 また、書籍という具体的なモノとゲームブックとの関係をとらえていることも見逃しがたく、そうした認識をゲームブックの実作において対象化しており、これは情緒的な水準での「紙の書籍」と「電子書籍」の対比とは違うレベルでの議論に値すると言えるでしょう。とりわけフーゴ・ハルさんの「バーナム二世事件」は、ページをめくるという行為とセットでなければ成立しない仕掛けが施されているので、是非その点にも注目してもらいたいものです。

 思緒さんがブレナンの作品について、読者の創造的な反応を呼び起こすことに強い関心を抱いていることも興味深く、私見では読者の創造性を駆動させるあり方ついては、思緒さんの「夢草枕、歌枕」のような実験的な作品において、よりゲームの本質的な部分と結びついたのではないかと思っています。

 このあと「ドルアーガ三部作」のポストカードがかかった三択クイズコーナーがあり、送り雛に出てきた名前をあてろという問題も。わたしは送り雛で作中に出てくる資料をまとめたことがあるので、塩有三さんだと分かったのだが(『日本の民族と魔的記号』などの著書がある設定)、酒井さんのヒントでこれが「しおゆうじ」からの名前だとやっと気づく。遅っ!本当にわたしはこういう部分とか全然気づかないな。

 サイン会は、当日都合がつかず欠席となった鈴木直人さんと虎井安夫さんに事前にサインしてもらった色紙が入場時に配られ、そこに当日参加の作家の方々に書き加えてもらうという流れ。あわせて著書一冊にもサインがもらえるという大盤振る舞いです。
 で、もらった寄せ書きがこれ!
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 もう、ちょっとあらためて見ても信じがたいアイテムですよ。見てるか、中学生のオレ!
 なお、森山さんのサインはハンコがあるものとないものがあったり、入場者多数のため急遽用意された追加分の色紙には、虎井さんのサインがないなどのバージョン違いがあるようです。ともあれ25年近い時を超えて、実現したこのイベント、集まってくれた作家のみなさん、企画を進めてくれた創土社の編集さん、そして復刊作品を買い支えてきた執念深いゲームブックファンの方々に感謝を。それぞれの作家の方のゲームブックへの真摯な姿勢に感動しました。最初に二度とはないだろうなんて言ったのですが、またあるといいな。
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posted by すける at 23:54 | Comment(2) | TrackBack(0) | ゲームブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ゲームブック作家と言えば洋物のスティーブ・ジャクソン(英)、イアン・リビングストン、フーゴ・ハル、ハービー・ブレナンや東京創元社の鈴木直人、安田均、林友彦、宮原弥寿子、森山安雄等が掲げられますが…。私的には双葉社やケイブンシャ、講談社X文庫、光文社他多数等で活動していた日本一ゲームブックを数多く手掛けていた作家集団スタジオ・ハードが好きかなぁ…。主に塩田信之、樋口明雄、滝沢一穂、伊吹秀明、池田美佐、上原尚子、竹田明、山口宏、吉岡平、飯野文彦、草野直樹、富沢義彦他多数等が参加しており、海外のゲームブック作家や東京創元社のゲームブック作家にはない独特なギャグやゲームシステム、作者のお遊び心も溢れており(特に余ったパラグラフで、ミニストーリーのゲームブックを作ったり、他のゲームブックのPR等々…)、イラストレーターも伊藤伸平や見田竜介、田中夕子、加藤礼次郎、おぐ・ぼっくぇ等といった後に漫画家に転身するお方もズラリと…、結構、大らかな時代だったな…。
Posted by マイケル村田 at 2016年12月07日 19:15


>マイケル村田さん

スタジオ・ハードありましたねぇ。とても全部はカバーできませんでしたが、ルパン三世ゲームブックとかけっこう好きでした。いまは散逸させてしまったのが悔やまれます。
Posted by すける at 2016年12月08日 23:28
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