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2014年11月22日

『アナキストサッカーマニュアル』ガブリエル・クーン

 刊行からはずいぶんと遅ればせながら『アナキストサッカーマニュアル』を読了。

アナキストサッカーマニュアル―スタジアムに歓声を、革命にサッカーを
アナキストサッカーマニュアル―スタジアムに歓声を、革命にサッカーを

 世界のサッカーシーンとアナキズムあるいは左派的な政治との関わりを描いた本書には様々な側面があるが、日本では参照することが難しいサッカーに関わる世界各国の政治党派の機関誌に載った文章や左派系新聞の論説などが多く引かれていて興味深い。
 サッカーは大衆のアヘンであるという左派からしばしばなされがちである批判があらためて参照され、著者はそのような傾向があることを認めながらもそれにとどまらない可能性を提示していく。スペクタクルによる感性の麻痺の現場であるがゆえに、そこに抵抗が存在する可能性があるのだ。
 もうひとつのサッカーに関わる批判として、サッカーの現場が人種差別や性差別の表現のなされやすい場所であることはたしかなのだけれど(わたしも友人にしばしば批判を受けた)、同時につねにサッカーの現場においてサポーターを主体としてそうした差別への反対行動がおこなわれてきたことには注意をはらわれるべきで、本書ではサポーターたちがスタジアムにおいて繰り広げてきた様々な抗議行動が紹介されており勇気づけられる。

 逆にサポーターや熱心なサッカーファンの側から提示される問題は市場化されたサッカーが大企業化したクラブやスタープレイヤーとファンを分断してしまうということで、これはサッカーに本格的に興味を持ったのはJリーグ創設というまさに市場の創造が契機というわたしにはいろいろ悩ましいところもある。
 ひとつの解決は、自分たちでサッカーをしてしまうという当たり前のことで、それがすべての答というわけでもないけれど、アウトノーメ的な発想を軸としたサッカークラブや大会を自作するというのは、やっぱり楽しそうである。
 自律性はやはりひとつの鍵で、ヨーロッパのサッカースタジアムにおいて、サポーターが自ら編集するファンジンを発行し続け、他の地域・国々の同様なサポーターたちとミニコミを交換し合うという文化は日本にはあまりない文化であると実体験としても思わざるを得ない。まず、大きなメディアと企業によって作り上げられたチームとファンとの関係は、公式の広報やグッズという媒介を通じるという形が自明のものとしてあり、オフィシャルという肩書きこそが意味を持ち、そこから逸脱した行為には消極的という雰囲気はしばしば見られる印象が強い。こうした部分はもっと変わっていてっもいいのではないかと思う。

 堅苦しい感じの話が多くなったけれども、スタジアムにおける性差別に反対している女性サポーターが、女子ワールドカップ優勝の予想を聞かれて「あまり興味がない。ブンデスリーガでシャルケが優勝しないことが重要」と答えるくだりや、試合でネットを揺らすことではなく、バーにシュートを当てることに血道をあげるアウトノミアのチームなど、ユーモラスな人物も次々とあらわれて楽しく読める。サッカーについての固定観念があるときに、もうひとつのサッカーを提示してくれる愉快な本だ。
タグ:アナキズム
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posted by すける at 09:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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