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2016年01月03日

『獣人』ジャン・ルノワール監督・エミール・ゾラ原作

 シネマヴェーラ「映画史上の名作」枠で鑑賞。劇場で見るのは難しいのではと思いつつも、少し前の新文芸坐ピクニック at ハンギングロック』の併映だった『ピクニック』でジャン・ルノワール監督の作品を見て布石を打っておいたのだった。

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 冒頭でゾラが映されるシーンにルノワールからの敬意がまざまざと感じられる。そこで述べられる遺伝子による決定論は現在ではそのまま受け入れられるものではないけれども、同時に文化的な振る舞いの再生産の傾向としてとらえ直すならば、くみ上げられるものは多いという気がする。

 ジャン・ギャバン演じるジャック・ランティエはマッカール系の人物であり『居酒屋』のジェルヴェーズの息子、『ジェルミナール』のエティエンヌや『ナナ』のナナの兄であり、映画化もされているルーゴン=マッカール叢書の他の重要作品に連なる人物である。彼の突如として沸き起こる殺人への衝動と機関車という近代的な移動手段との結びつきが作品に大きな効果を与えていることは見るものの眼にあきらかだろう。列車から撮られた映像はすばらしい説得力をもっており、文章からだけではイメージしがたかったフランスの鉄道風景を見られたことも収穫だった。

 女性陣ではジャックが魅了されるセヴリーヌよりはやや曖昧な関係のまま終わるフロールの方が原作でも映像でも魅力的だと個人的には思うのだが、映画では冒頭、ジャックの衝動を描く場面以外では登場しないのはちょっと残念だった。もっともメインで出ることになると凄惨な最後をむかえることになるので、その方がよかったかもしれない。

 映画版の『獣人』の舞台は20世紀に寄せられているのだろうし、映画単体での眼目は19世紀を描くことにはなかろうからそれはそれでいいのだけれど、そうなると作品のラスト、鉄道の驀進がジャックたち個別の人物の悲劇などはじき飛ばす勢いで普仏戦争に直結していくというつくりは消えてしまう、そこだけは少しもったいなく感じる。

獣人 ゾラセレクション(6)
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タグ:ゾラ
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posted by すける at 22:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・演劇・ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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