2015年04月29日

『ジミー、野を駆ける伝説』ケン・ローチ監督

 下高井戸シネマで『天使の分け前』以来のケン・ローチ。



 アイルランド内戦のいちおうの終結の後、亡命先のアメリカから帰ってきたジミーは古い仲間たちとともに民衆によるホールの再建に着手する。しかし、それはカトリックの教会や保守層の反発をまねき、銃撃や放火という攻撃にまでさらされていくことになる。
 音楽やスポーツ、詩の朗読などがなぜそれほどまでに怒りを買うことになったのか。ジャズは悪魔の音楽だから?それならばそのような誤解はさすがにたいがい解消されたから過去のひとつのエピソードに過ぎないのか。
 そうではない、ホールがこのような攻撃の対象となった根拠は、労働者たちが自分自身で学習の場所を作り、管理し、維持していくという行為にあった。その意味で教会をはじめとするものたちが向けた憎悪は本質的なものであり、それゆえにいまでもジミーたちの困難は普遍的なものとして存在する、この日本でもだ。

 自分は学者ではないと語る主人公のジミー・グラルトンは、一貫した直接行動の人物で、芸術や娯楽の場であるホールを自主運営することも、小作農の借地権をめぐる闘争で直接地主の元へ押しかけるのも、同一平面上の思想に裏付けられている。こうした労働者階級の知性を主演のバリー・ウォードは好演しており、この作品に出るまでそれほど知られていなかったというのはちょっと信じられないほどだ。

 下高井戸シネマ年会員の招待券を使って見たので、パンフレットを買って還元。こうした映画が作られ、配給され、鑑賞されるということへの感謝もこめて。

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2015年04月14日

『神々のたそがれ』アレクセイ・ゲルマン監督

 ストルガツキー兄弟原作『神様はつらい』を原作とした映画化作品。ユーロスペースで鑑賞。

 とにかく三時間にわたって密度の濃い映像に直面させられ続ける。しばしばフォーカスされた人物とカメラの間を誰かしら横切り、居心地を悪くさせる意味ありげなカメラ目線を突っ込んでくる人物たち、こういったものが積極的に「観客」に消耗を強いてくるのだ。

 ストーリーが分かりづらいという話があって、たしかに説明的な映像ではないのだけれど、骨子となる設定は開幕と終幕直前のセリフ等で分かるようになっており、テーマ性は主人公であるルマータと反逆者であるアラタとの会話に集中的にあらわれていると言えるだろう。とはいえ、この作品において真に雄弁なのは泥濘やむやみに吐かれる唾、非常に気楽にふるわれる暴力と地続きになった死といったものへのカメラワークだろう。

 わたしがストルガツキーを原作とした映画を見るのはタルコフスキーの『ストーカー』以来の二本目となるわけだけれど、それぞれ原作をハコにしてそれぞれの監督自身の表現方法やテーマ性を強固に打ち出すつくりになっていて面白い。個人的には『蟻塚の中のかぶと虫』の映像化も見てみたいと思っている。

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2014年12月31日

『プロジェクトA』ジャッキー・チェン監督

 クリスマスにはTOHOシネマズの再映でもう何度目かという『プロジェクトA』。それでもスクリーンで見るのは84年以来かな。まあ、80年代の小学生にとってジャッキーの映画に抵抗できるわけはないのです。

プロジェクトA デジタル・リマスター版 [DVD]
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 いや、もう何回見ても面白いんだけれども、酒場の乱闘シーンとかあれだけの人数が同時に展開する格闘をいったいどうやって設計しているんだろうね。武術指導という役職、子供のころはアクションそのものだけに指導をつけて監督するのかと思ってたけど、ことアクションシーンに関してはカメラワークの権限まで持っている重要なポジションなんだなと今さら気づく。まあ、監督と兼任している場合も多いのだけれど、それでも別個の役職として表記されなければいけないほどの意味があるわけだ。
 それにしても茶屋で言い争うジャッキーとサモ・ハンが敵の乱入に一時休戦→コンビネーションで一掃の流れは何回見てもかっこよすぎる。しかしあのすさまじい動きはコンテから落とし込めるものなのだろうか。

  また、そうしたアクションシーンの中でもパッと短いシーンで人物の性格を表現していて、酒場の乱闘で酒瓶を割ってにらみ合いのあと、ジャッキーがびんを捨てたのを見て自分も手放すユン・ピョウとか、最初は敵対関係にあるけど最終的には悪い奴ではないというのをセリフ抜きに画で一発で分かるように見せていて、この辺のテンポのよさも見逃せない。

 潜入時の合言葉ギャグは、子供のころに見た時にはアクション映画のなかで扱われるには過剰なボリュームという気がしたけど、あれは香港映画としては必須な要素なんだろうね。人違い/入れ替わりとかも本当好きだよね。『五福星』なんかは本来は香港映画の中にあるスティング系というかそんな感じの作品だったんだろうけど、日本で売るにはジャッキーのアクション主体という宣伝になるのは仕方ない。劇場で見た時は肩透かし食った気がしたけど、あの辺もう一度見直してもいいな、『ミスター・ブー!』あたりまで射程に入れて。

 この映画、早すぎた海賊映画の趣もあり、ディック・ウェイ演じる海賊の首領は十分に胆力のある魅力的な人物で、ごく平穏な民間船を装いながら一気に牙をむく英国船への襲撃シーンも見事な迫力になっている。またインド人の衛兵はモブに近い形だが、香港をめぐる複雑な情勢の一端を垣間見せており、いまなら彼らをよりストーリーに織り込んだもう一つの『プロジェクトA』もありうるんではないかという妄想を。
 というわけで、今年最後の記事はおめでたい感じのアクション映画で。『プロジェクトA』は年末年始ごとに毎年やってくれてもいいと思います。
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posted by すける at 22:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・演劇・ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする