2015年04月14日

『神々のたそがれ』アレクセイ・ゲルマン監督

 ストルガツキー兄弟原作『神様はつらい』を原作とした映画化作品。ユーロスペースで鑑賞。

 とにかく三時間にわたって密度の濃い映像に直面させられ続ける。しばしばフォーカスされた人物とカメラの間を誰かしら横切り、居心地を悪くさせる意味ありげなカメラ目線を突っ込んでくる人物たち、こういったものが積極的に「観客」に消耗を強いてくるのだ。

 ストーリーが分かりづらいという話があって、たしかに説明的な映像ではないのだけれど、骨子となる設定は開幕と終幕直前のセリフ等で分かるようになっており、テーマ性は主人公であるルマータと反逆者であるアラタとの会話に集中的にあらわれていると言えるだろう。とはいえ、この作品において真に雄弁なのは泥濘やむやみに吐かれる唾、非常に気楽にふるわれる暴力と地続きになった死といったものへのカメラワークだろう。

 わたしがストルガツキーを原作とした映画を見るのはタルコフスキーの『ストーカー』以来の二本目となるわけだけれど、それぞれ原作をハコにしてそれぞれの監督自身の表現方法やテーマ性を強固に打ち出すつくりになっていて面白い。個人的には『蟻塚の中のかぶと虫』の映像化も見てみたいと思っている。

神々のたそがれ  HDマスター アレクセイ・ゲルマン監督 [DVD]
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2014年12月31日

『プロジェクトA』ジャッキー・チェン監督

 クリスマスにはTOHOシネマズの再映でもう何度目かという『プロジェクトA』。それでもスクリーンで見るのは84年以来かな。まあ、80年代の小学生にとってジャッキーの映画に抵抗できるわけはないのです。

プロジェクトA デジタル・リマスター版 [DVD]
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 いや、もう何回見ても面白いんだけれども、酒場の乱闘シーンとかあれだけの人数が同時に展開する格闘をいったいどうやって設計しているんだろうね。武術指導という役職、子供のころはアクションそのものだけに指導をつけて監督するのかと思ってたけど、ことアクションシーンに関してはカメラワークの権限まで持っている重要なポジションなんだなと今さら気づく。まあ、監督と兼任している場合も多いのだけれど、それでも別個の役職として表記されなければいけないほどの意味があるわけだ。
 それにしても茶屋で言い争うジャッキーとサモ・ハンが敵の乱入に一時休戦→コンビネーションで一掃の流れは何回見てもかっこよすぎる。しかしあのすさまじい動きはコンテから落とし込めるものなのだろうか。

  また、そうしたアクションシーンの中でもパッと短いシーンで人物の性格を表現していて、酒場の乱闘で酒瓶を割ってにらみ合いのあと、ジャッキーがびんを捨てたのを見て自分も手放すユン・ピョウとか、最初は敵対関係にあるけど最終的には悪い奴ではないというのをセリフ抜きに画で一発で分かるように見せていて、この辺のテンポのよさも見逃せない。

 潜入時の合言葉ギャグは、子供のころに見た時にはアクション映画のなかで扱われるには過剰なボリュームという気がしたけど、あれは香港映画としては必須な要素なんだろうね。人違い/入れ替わりとかも本当好きだよね。『五福星』なんかは本来は香港映画の中にあるスティング系というかそんな感じの作品だったんだろうけど、日本で売るにはジャッキーのアクション主体という宣伝になるのは仕方ない。劇場で見た時は肩透かし食った気がしたけど、あの辺もう一度見直してもいいな、『ミスター・ブー!』あたりまで射程に入れて。

 この映画、早すぎた海賊映画の趣もあり、ディック・ウェイ演じる海賊の首領は十分に胆力のある魅力的な人物で、ごく平穏な民間船を装いながら一気に牙をむく英国船への襲撃シーンも見事な迫力になっている。またインド人の衛兵はモブに近い形だが、香港をめぐる複雑な情勢の一端を垣間見せており、いまなら彼らをよりストーリーに織り込んだもう一つの『プロジェクトA』もありうるんではないかという妄想を。
 というわけで、今年最後の記事はおめでたい感じのアクション映画で。『プロジェクトA』は年末年始ごとに毎年やってくれてもいいと思います。
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posted by すける at 22:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・演劇・ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月12日

大林宣彦尾道三部作 『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』

 早稲田松竹、大林宣彦の三本立てでまとめて鑑賞した際の感想の転載。名画座はすばらしい。

転校生 [DVD]
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『転校生』は子供のころにけっこうテレビで流していたが、小学生にとっては小林聡美のおっぱいが出てきた時点で、作品全体を見る余裕が失われていたので、途中とか記憶になかったりする。
キワモノめいた誤解を受けかねない題材を扱いつつも、山中恒の原作を用いてセクシュアリティをめぐる物語の入門編として非常にすぐれているが、映像化する瞬間に小林聡美がいたってのは幸運であった。終盤に小林聡美がいわゆる「女の子っぽい」振る舞いに戻ると、一瞬違和感を感じるくらい、途中の少年ぶりも見事だが、最後のワンピース姿では完璧に美しい少女であるのも驚異だった。 オールタイムベスト級の名作。

 一方『時をかける少女』に関しては、あれは劇場公開時に見るべきものだったのではないかという印象も。SFとしてみると、時間をめぐって特にぶっとんだ発想や力技があるとは言えなくて、しかしこの作品はそういうところを見るもんじゃないんだよと反論されると、わたしとしては論じるとっかかりがなくなるつーか。
 この時点での原田知世の演技力に関しては、小林聡美の直後に見てしまうと、厳しい。ただまあ、エンディングで岸部一徳たちが原田知世に花びらをかけるシーンがあるが、つまり全編がこういうことなのだろうと思う。一般向けの映画で、時間の中を移動するだとかそういうアイデアを自然に扱えるようになったのはこの時期くらいからかなーと思うと、いろいろエポックだ。

 『さびしんぼう』は、ずっと富田靖子がヒロインだと思っていたんだけれど、これはトラップで、じつは藤田弓子の映画であった。
 抽象的という評価もあるようだが、成熟というモチーフが一貫して扱われているという意味では、むしろはっきりと分かりやすい。ラストで、17歳のさびしんぼうの写真を風には飛ばせなかったという前後のヒロキの台詞からも、そのことに自覚的であることが分かる。
 現実のさびしんぼう(百合子)と、幻想のさびしんぼうというような分立は、わりと無意味で、さびしんぼうはどちらにしても幻想なのである。だから、現実のさびしんぼうの役をあてがわれた百合子は、あなたが好きになったわたしは片方の側から見たわたしで、もう片方のわたしはあなたには見てほしくない、と主人公に告げるのだ。 現実のさびしんぼうも、男の側が一方的に設定したアングルとフレームで切り取られたようなありかたで認識されている(それは憧憬と言いつつやはり暴力の行使だ)限りにおいては幻想的な存在に過ぎないのだ。
 だからこそ物語の終盤で、さびしんぼうと別れたあとに、生身の女性を愛せるかという問いが主人公に突きつけられることになる。 作中ではっきりと述べられているわけではないけれど、百合子の生活に影があることはそれとなく暗示されている。これは、百合子の言う「もう片側のわたし」となんらかの関係があるのだろう。
 そして、ここに対応するのは、父親役の小林稔侍と主人公が風呂に入るシーンだ。作中、ひたすら木魚を叩き念仏を唱える父親が、ただ一度長い台詞を任されるので、それだけでも重要な場面であることは分かる。 父親は、母親が自分と知り合う前に経験したであろう恋愛について承知しつつ、そのことも含めて彼女の人生全体を受容していることを主人公に告げる。ヒロキは幻想のさびしんぼうという臍の緒を断ち切りつつ、現実のさびしんぼうには別れを告げられるのだが、それは一方ではヒロキが現実の百合子にあらためて向き合う機縁でもあるはずだ。うーん、どう考えても、かなり論理的な構成ではないか。

 個人的にはそこで投げかけて打ち切ってしまうべきで、「その後」のシーンは蛇足だと考えるが、まあいい。映画的には必要でもあるんだろう。一般的には「尾道三部作」のなかでも評価の割れる作品らしいが、見終わったあとにいろいろ言葉が出てくるのはこの作品。って、字数から見ても明らかですが。それにしても、髪を長くした富田靖子ってこんなに可愛かったか。ピンポイントで選ぶなら、自転車ですれ違う際に軽く目礼するシーン。


 3作品通じて、やはり思春期における肉体的、精神的な変容のテーマがはっきりしていて、旅をすませた後に、元の場所に戻ってくるけれど、そのときには少し成長しているというビルドゥングス・ロマンとして、しっかり成立している。こういうものを劇場作品として送り出せた80年代ってのは捨てたものでもない気がするね。

時をかける少女 [DVD]
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さびしんぼう [DVD]
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posted by すける at 13:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・演劇・ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする