2013年11月26日

『ふくやまジックヴック』ふくやまけいこ


 コミケの方で動きがあるという話もあり、これを機に過去記事に削ったり足したりしながら転載。最初書いたときとの一番の違いは『ファンテール』をめぐる状況だなぁ。今回は中身を見たことないという人が多目だと思うので、画像を少し付けときます。スキャンないんで携帯撮りでごめんね。しかし、いやもう開くだけで幸せいっぱい。タップ君とかもきさんのコンビ(『タップ君の探偵室』)はこの頃には出来上がっていたのかとか、『ファンテール』のドーナ・ギッシュのデザインも、性格はずいぶん違うみたいだけど既に固まってたんだとか、スケッチをパラパラめくるだけでふくやま者ならいくらでも楽しく読めます。

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 短編としてまとまったいくつかのマンガをテーマから読んでも「こゆびひめ」や「まるくび」なんかには、「子リスのポッキー」や「永遠の友情」、あるいは近作の『話の話』第三話に見られる、「この世界」に対する根源的な違和感や、あるいはこの世界からたやすく連れ去られる子供といったモチーフが顕著に見られて興味深い。 ふくやまけいこの作品の一部には、こうした理解のされ方を拒む、ある「遠さ」についての感性が存在する。

 また、ふくやまさんは『ゼリービーンズ』の「Sleeping Beauty」での成長できないアンドロイドの少女というテーマに、20年以上経ってから『星の島のるるちゃん』の文庫版追加エピソードであらためてアプローチするなど、あんがい粘り強い人だ。
「こゆびひめ」は習作であり、かつ未完なのだけれど、こゆびが、この世界でうまく生きていけないとして、それではうちを出て行った彼女がどうすれば幸せになれるのかが分からないので続きが描けないとふくやまさんは語っている。それは、たとえば魯迅の「ノラは家出してからどうなったか」が提出した問題と、本質的には近似するもので、誠実であるならばそう簡単に答が出るものではないのだけれど、このブログで何度も繰り返しているようにこのテーマはふくやまさんの描くその後の人物たちによって変奏され続けていることは注視したい。

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 商業誌では『福袋』に多く収録された、感想マンガの類も入っていて、パンダ・コパンダやカリ城、ニルスの不思議な旅など。 ふくやまさんの感想マンガは、『悟空の大冒険』についてのものがネット上にあるけれども(WEBアニメスタイル)、自分が見た作品をこういう風に感想書けるってのはうらやましいね。見えてるところが全然違うというか、わたしなら絶対気づかないようなところを拾い上げてくれて、世界の見方が広がっていく。

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 ふくやまさんは85年の『銀河鉄道の夜』についての感想を、アニメージュに1ページかひょっとしたら2ページ使って描いていたことがあったのだけれど、あれは単行本の類には収録されてないはずなので、ちゃんと保管しておかないといけないなと思ったり。 というか、こういった未収録のカットとかもひとつにまとめて刊行してほしいなぁ。
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2013年10月28日

『ファンテール』(Jコミ)ふくやまけいこ

 先日もブログでお伝えしたように、『ファンテール』のJコミ公開が来ましたよ。
http://www.j-comi.jp/book/comic/46081

『ジ・アニメ』での連載以降、相当ページ数があるにも関わらず約30年単行本等にはまとまってこなかった作品で、「ある意味『ふくやまジックヴック』より貴重」というJコミの言葉も決して過大ではありません。
 本編以外の画像ということで、先日の記事に貼っておいた『ジ・アニメ』折込のポスター(Jコミでは5ページ)や、『ふくやまジックヴック』で描かれたドナのスケッチ(同171ページ、「第一部〜Fin〜」部分)なんかも含まれていて、とても丁寧な収録になっています。これはぜひ読んでもらいたいですよ。

 わたしも『ファンテール』についてはツイッターとかでわんわん吠えてたんですが、こんなことになるとは思ってもみませんでした。


 ああ、この時期のふくやまさんの絵を、今あらためてたくさん眺められる喜びよ。スカートをはいたダイナの想像図、めちゃくちゃ可愛いじゃないですか。あと、サブキャラですがメアがかわいすぎてつらい……。

 また、連載開始時の「ごあいさつ」での「ひたいから光がさしてるような女の子をかきたいと思っています」という言葉やジックヴックの「自分が生きることの正当性をたちどころに答えることのできる」女の子の話を書きたいという文章などを見ても、ふくやまさんのドナという主人公に寄せられた思いの強さが伝わります。「クローンてのはたいていそんなもんだ」というドナやダイナが置かれた立場、そこから彼女たちが「生きることの正当性」をどのように答えていくのか、「そんな事のためにその子達の体は使わせない」というドナの決意、「だからってやつらの好きな様にはさせない」というダイナの意志がどのようにつらぬかれるか、最期まで見届けたかったですね。それでも、こうしたテーマはふくやまさんの描く女性たちにその後も受け継がれ続けているはずです。

 第一部完とはありますが、線も変わってしまっていますから、直接の続きとしてドナやダイナを描かれることはないのだろうなぁとは思っていて、でも、彼女たちの闘いのその後の世界から回想される特別編なんてものは、もしかしたらあってくれてもいいかなとも。ダイナもあのままじゃかわいそうだしね。シャロンのようなキャラクターをふくやまさんがどう着地させるかも気になります。あとは、本編では回想シーンにちらりと登場するだけだったディナとダイナの物語なども。おっと、連載分だけでもまとめられれば満足とか言っててはずなのに、いろいろ希望が出てくるからファンというのは勝手なもので……。
 また、ふくやまさんが描く世界としては、本作はなかなかハードな設定ですが、こうした味をほかにも読んでみたいという方は、短編の「子リスのポッキー」なんかいいんじゃないでしょうか(『チカチカ☆ミミちゃん』(朝日ソノラマ)、『お父さんのクリスマス』(大都社)所収)。こっちはある意味より厳しいんだけど、ふくやまけいこという作家の作品の幅をよく示していると思います。こういう方向性のものももっと読みたいな。

(追記)このあと、Jコミからのサービスとして公開作品の印刷製本もβ版の様子を見た上で正式版のリリースが始まりました。『ファンテール』も対象作品で、このページ冒頭のリンクから作品紹介ページへ飛び、右上にある「Jコミで印刷できるってよHD」ボタンを押すと購入できます。裏表紙にはふくやまさんのサイン画像が入ります。2014年のふくやまさんのドナだよ、ほんと、生きててよかったですね!

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お父さんのクリスマス
お父さんのクリスマス

チカチカ☆ミミちゃん
チカチカ☆ミミちゃん
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2013年09月27日

『手天童子』永井豪

 永井豪の最高傑作を選べと言われたらどうしよう。どうもこうもないか、『デビルマン』の一択だ。では永井豪SFマンガのベストを選べと言われたらどうするか。わたしは『手天童子』としたい。

手天童子 (1) (講談社漫画文庫)
手天童子 (1) (講談社漫画文庫)


 もはや説明するまでもなく『手天童子』は伝奇的な物語が少年マンガに定着する先駆的な役割を果たした作品の一つだろう。だが、超常的な能力に目覚めた少年が、彼をつけねらう邪教カルト集団との戦いに巻き込まれるとか、過去や未来の時間移動とか、異空間の鬼の世界とかいうことを無視すると、思春期を迎えて「親」との関係にぎくしゃくするものを感じた少年が、家の外に出て、彼女を作ってから家に帰ってきて両親と和解する、それだけの話だ。それだけ、それだけが凄い。

 大風呂敷の方に話を戻しても、未来世界の宇宙空間の果てに発見された、滅びた鬼の惑星ですらが、最終的に親子関係の葛藤に端を発することが明らかにされる。過去の世界においては、主人公手天童子郎の名前のもとになった「酒呑童子伝説」について、トリッキーに語られる。こうして過去や未来にまで飛び跳ねた上で、少年はお互いの葛藤を乗り越えた上で、真の親子として関係を結びなおす。だからこそ、ラストはしっかりと定型を踏んで冒頭のシーンを再演するのだ。

 これらの時間移動も異空間の現出も、すべてはある人物の情念から発している。この論理における原因と結果は自らの尾を飲む蛇の形で入り組んでいるのだが、そのような閉塞した内面により生じた異空間を打ち破るために、きわめて物理的な手段(ハンマー!)が用いられる。ここから並行して起こる異空間の崩壊はまさにクライマックスにふさわしい。
 そして、物語の当初から、『手天童子』はこの場面の後に続くラストへ一直線に進んできたことを読者ははっきりと思い知らされることになる。永井豪の諸作品には他に見えないこの構成力において、わたしは『手天童子』をSFのベストと考える。

 ということで、あとは軽い話。子郎を守るために白鳥勇介に集められた(というだけではなかったが)メンバーはスターシステムで、コヤヤシや直次郎が出てきますが、リッキー(無双力)もその一人。正直、ヒロインの白鳥美雪よりも魅力的だと思うのだけれど(特に邪腕防に投げられてお尻が子郎に乗っかってお互い顔を赤らめるとことかね)、子郎を守って最期を迎えます。
 リッキーはこの後も『バイオレンス・ジャック』の「関東地獄街編」に登場したりしますが、やはりアイラ・ムーを守って……(泣)豪ちゃんはリッキーを幸せにしてあげてくださいと思います。未読の作品に『心霊探偵オカルト団』というのがあって、ここにもリッキーが登場するというか、これが永井豪世界への初登場のようなのですが、調べている限りではなんとなく死なずに済みそうな感じがするので、そのうち読みます。

 あと、栗本薫が『魔界水滸伝』のあとがきで言っていたと思うのだけど、安西雄介のキャラクターの原型として白鳥勇介があるみたいですね。納得というか、あれ、あくまで勇介であって、早乙女門土ではないのかという。ちなみにわたしは小学生の時に『手天童子』を立ち読みしてて「牙の草原」のシーンがあまりに怖くて、その先が読めなくなり、読み通すのに豪華愛蔵版が刊行される高校生になるのを待たねばならなかったという、まあトラウマですよ、勇介は。

手天童子 (4) (講談社漫画文庫)
手天童子 (4) (講談社漫画文庫)
タグ:永井豪
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posted by すける at 22:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする