神君幻法帖 (徳間文庫)
オリジナルでの伊賀甲賀十人対十人の忍者戦は整理されて、山王一族と摩多羅一族の幻法者敵味方七人同士になっている。現象としては『甲賀忍法帖』と同じような術に関しても、忍法解説ならぬ幻法の説明は、山田SFらしく脳の作用に関わるものが多くなっているのが目を引く。風太郎による忍法の医学的解説にも異化効果はあったけれど、本作の偏執的なまでの説明は、むしろユーモラスな味さえかもし出している。
忍法帖のとりわけ初期においては、上位にある権力者によりプログラムさえ組まれてしまえば、忍者たちは異をはさむことなくそれが当たり前のごとくに殺しあい、彼らが持つ超絶妖異の技もむなしく消滅していってしまう。しかし本作においては対決を命じられるやいなや、両派は真の目的を探るために命じた側に間諜を放って、わけもわからぬまま簡単に転がされる意思はないことを明らかにする。このあたりは実に山田正紀らしい。そして、この布石は終盤には構図を逆転させて、冒頭からの章のタイトルの意味を変えてしまう。これはやはり山田正紀の小説なのだ。
そしてもしも、次が『くノ一忍法帖』だったならば、それは『女囮捜査官』のテーマと山田SFが融合する場所になるのではないかと、ぼんやり期待したりもするのだった。
甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1) (講談社文庫)
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